舞台「有毒少年」ヘブンズパレスの謎(ネタバレ注意)[追記あり]
11月30日の大阪公演を最後に、舞台「有毒少年」の全公演が終了しました。「有毒少年」の世界に迫るため、レポートをまとめています。
以下、重大なネタバレを含みます。DVDなどで観る前は、いっさいの情報を知りたくないと言う方は、DVDを観終わった後に、またお越し下さい。
前々回は登場人物について、前回は舞台構成についてまとめました。
今回は、ストーリーの軸となる、4つの謎を解き明かします。
ヘブンズパレスには、4つの謎があります。
- いびつな形をした人間
- 子供が産まれなくなった
- 太陽が昇らなくなった
- 生きている時の名前を覚えていない
これら4つの謎全ての原因は、魔女が降らせた毒の雨による物です。なぜ、魔女が毒の雨を降らせたのかは、別の記事で解説しようと思います。
1. いびつな形をした人間
ヘブンズパレスの住民は、一部の例外を除いて、全員死んでいます。毒の雨を降らせた魔女自身も死んでいます。
住人が死んでいるのに、なぜ舞台が進行するのか? それは、登場人物はみんな魂なのです。
人の魂は、元々いびつに歪んでいる物なのだそうです。
それで、ヘブンズパレスの住民は、みんな異形の存在なのです。
そして、自分が死んでいる事に気が付いていません。死んでいる事に気が付かないのは、魂はふわふわした存在で、まるで夢の中にいる様な感覚だからだそうです。
そんな魂達ですが、自分が死んでいる事に気が付いた魂達が居ます。それは、自殺を試みた魂です。死んだ人間は、二度と死ねない。それに気が付いた魂達も居ました。
なお、「一部の例外」とは、「有毒少年」と「無毒少女」です。
有毒少年は、毒の中でしか生きられませんし、無毒少女は、外界から遮断された無菌室にいたため、毒の雨の影響を受けませんでした。
なので、二人だけが生き残っているのです。
2. 子供が産まれなくなった
死んでいるので、子供が産まれません。
3. 太陽が昇らなくなった
これも、舞台中では、「死んでいるから」と説明されていました。
私が「有毒少年」を観て、唯一納得できていない所がこれです。
- 人が死ぬと、何故太陽が昇らなくなるの?
- 「有毒少年」と「無毒少女」生きているのに?
魂達は、太陽が昇った事がわからないと言う事でしょうか? まあ、そういう事にしておきましょう。
「有毒少年」は、地下のシェルターに居るので、太陽が昇ったかどうかわかりません。これは、説明がつきますね。
「無毒少女」は、無菌室に閉じ込められているからでしょうか? でも、無毒少女は、窓越しに月を見る事ができます。窓がついているなら、太陽が昇っている事はわかるはずですが?!
う〜ん、やっぱりわからない。
(追記 2011-12-23 00:31)
どかゆきさんとT-E-R-Uさんからコメントをいただきました。お二人のコメントがヒントになり、謎が解けました。
どかゆきさん説「太陽の紫外線は毒だから、昼間は太陽を遮断していた」
T-E-R-Uさん説「魂達は、太陽の出ている間は活動できない? ブリキの大公が青蛇に、遮光シャッターを下ろす様に命じていた」
このお二人のコメントに、妖怪に詳しい水木しげる先生の「ゲゲゲの鬼太郎」の歌詞「朝は寝床でグーグーグー」を合わせて考えると、答えがわかりました。
「無毒少女サリーも含め、ヘブンズパレスの住民は、昼夜逆転した生活をしている」のです。つまり、太陽の出ている昼間は寝ていて、次の出ている夜に起きているのです。
なので、太陽が出ている事に気が付きません。昼間は太陽の紫外線を防ぐために遮光シャッターを下ろしていますし、太陽の光が入ってこないのです。
「死んでいるから」と言うよりも、「昼夜逆転の生活をしている」ので、太陽が昇っている事がわからないのではないでしょうか?
4. 生きている時の名前を覚えていない
これは、魔女の毒の雨の副作用で、名前を魂からはぎ取ってしまったからと説明されていました。
なるほど、上手い設定だなと思いました。
本当の名前を知らないと、魂達は成仏できないのです。
魔女も、自分が降らせた毒の雨で死に、そして名前も忘れてしまいました。
ですが魔女は、ピエロから本当の名前を教えてもらい、成仏できました。ピエロが魔女の名前を知っていたのは、魔女の息子である有毒少年から聞いていたからです。
そして、魔女以外の魂が名前を思い出せた訳は、魔女が消える(成仏する)事で、魔女の呪いが解けたからと説明されていました。
でも、「タイプライター」と「ネズミ」は、何かの拍子で、名前を思い出しているのですよ。
呪いよりも強い意志、あるいは出来事で、呪いを跳ね飛ばしたのでしょうね。
以上が、ヘブンズパレスの4つの謎です。
これらの謎が解き明かされるまで、上手く舞台を進行させており、観客を惹き付ける力になっていると思いました。
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ディスカッション
一度の観劇だったので、よくわからない部分がありましたが、かなり解決しました。
私は、無毒少女が太陽を見ていない理由は、「紫外線=毒」なので、昼間は太陽を遮断していたのかな??と考えていました。
ただ、これだと、読書家(=毒にも耐えられるようになった無毒少女=生存者)が太陽を見ていない理由がわからないですね。。。
3番目の謎…、自分にとっても何回観劇しても未だ解けないヘブンズパレスの謎です。石帽子先輩は、太陽が昇らなくなったのもそのせい(死んでいるせい)、とあっさり納得してましたが、どうしてそうなるのかどうも理解できません。
魂たちは太陽が出ている間は活動できないのでしょうか?? 大公が青蛇に(ヘブンズパレス城の)遮光シャッターを下ろすよう命じるのも何か関係があるような気がするのですが…。
どかゆきさん、いつもコメントありがとうございます。
お風呂に入っている間に、素晴らしいアイデアを思いつきました。
その前に、コメントにお応えしたいと思います。
なるほど! 紫外線は毒かもしれません!
「読書家」が太陽を見ていないと言う描写は無かったと思います。
続きは、本文中に追記します。
T-E-R-Uさんへ、いつもコメントありがとうございます。
お風呂に入っている間に、素晴らしいアイデアを思いつきました。
その前に、コメントにお応えしたいと思います。
T-E-R-Uさんも、不思議に思っていましたか!
遮光シャッターを下ろす様に言っていましたっけ…。ちょっと記憶があやふやですが、そういっていた様な気もします。
魂の活動時間帯、大きなヒントになりました。
続きは、本文中に追記します。
たびたびお邪魔します。^^
太陽が昇らなくなった理由、魂たちは太陽が出ていない夜の間しか活動していない(活動できない)から、と解釈したのですが、なぜそうなるのかが石帽子先輩のようにスッキリ理解できないのです…。(朧げな魂たちは太陽光線に弱い??) ファンタジー作品ですし、すべてを理性的に理解する必要もないのかな、とそこはあえて曖昧なままにしてます。^^; (どなたかこの作品に詳しい方からもコメントが付くとよいのですが…。)
はたして紫外線が有毒だったのかどうか分かりませんが、昼間は大公が遮光シャッターを降ろさせてしまうので、無毒少女ことサリーはきっと夜の間だけ遮光シャッターが開放された窓越しに夜空に浮かぶ月を眺めては“TOXIC MOON~♪”と歌っていたのでしょうね。10年後の読書家さんことサリーは、きっと有毒世界を旅するうちに初めて昼間には太陽が昇ることを知ったはず。幽霊さんとの会話の中では“太陽が昇らない”ことを示唆するような発言はなかったように自分も思います。
T-E-R-Uさんへ、再びコメントありがとうございます。
> ファンタジー作品ですし、すべてを理性的に理解する必要もないのかな、とそこはあえて曖昧なままにしてます。^^;
そうです、そうです! ファンタジー作品に関わらず舞台はそういう物ですよね。
完全ではなくても、それなりに納得できる理由があれば良いと思います。
花の花粉すら「有毒」と考えるブリキの大公ですから、「紫外線」も有毒と考えたのではないでしょうか?
いろいろ、スッキリしました。ありがとうございます。